20世紀の分析化学の足跡: 20世紀の産業を支えた分析技術 - 高分子

摘要

20世紀の産業を支えた分析技術のうち，高分子の分野での足跡を紹介するのが，筆者の任である。 産業，高分子，分析とキーワードを三つ並べると，二つの相異なる領域が見えてくる。 一つは高分子そのものの分析であり，今一つは高分子工業で用いられている触媒，酸化防止剤，紫外線劣化防止剤，油剤その他の低分子添加物の分析である。 編集委員会との打ち合わせにより，本稿では前者だけを扱う。 また，高分子科学や高分子工業では，高分子分析という用語は一般的ではない。 ある高分子が与えられたとき，それがポリエチレンかポリプロピレンかの同定であれば，正当的な分析化学の方法に頼るほどのこともなく，可能だからであろう。 分析機器が必要なのは，その次の段階，分子量分布，平均分子乱立体規則性，などの定量で，これはキャラクタリゼーショソと呼ばれる。 従って，分析化学で用いられるキャラクタリゼーショソの定義とも少し異なる。 もちろh，状態分析の意味で用いられることも多いが，分子分析と状態分析の中間に位置するものが重要である。 これらは筆者の私見で，確たる証拠があるわけではない。 ここでは，高分子分析の語を，分析機器を用いた高分子（分子及びその集合体）のキャラクタリゼーショソの意味で用いることにする。