カカオの生理機能研究の現状と今後の開発動向

摘要

チョコレートの原料であるカカオ豆は世界的に重要 な産業資源であり，西アフリカ.中南米，東南アジア の熱帯雨林地域において大量に生産されている.力力ォ樹物Theobroma cacaoはァォギリ科テオプロマ属 の1種で，原産地は南米のアマゾン川.オリノコ川流 域と考えられている.力力ォ豆には油脂（力力ォバター） が豊富に含まれ，またタンパク質や糖質等の栄養成分 の他に.ボリフエノールやテオプロミンといった機能 性成分が多量に含まれている.従来カカオ豆のポリフエ ノールは，チョコレートの色やフレーバーといったお いしさに関わる嗜好性成分としての関心を中心に研究 されてきた.現在，我々が食べているチョコレートや ココアは，原産地でカカオポッドを割り.中の豆と周 辺のパルプ部分を一緒に発酵.乾燥させた後，日本に 輸出され，焙焼されたのちペースト状に加工された力 カオマスを原料にして製造されている.カカオマスに 砂糖やミルクを加え，成型してチョコレートカs作られ， また，このカカオマスから物理的にカカオバターを取 り除いたものがココア製品となる.近年，そのカカオ 豆の成分研究が進められ，新たなる機能性が明らかに なっており，その機能性成分として，ポリフエノール 力{注目された.著者は，1990年ごろから.カカオポリ フエノールの持つ機能性，特に，抗酸化性に大きく注 目した.幸い，当時の0*明治製菓研究所（現芝浦ェ 業大学教授）の越坂部奈緒美博士や夏目みどり博士 （現 明治研究所）らを中心とする研究グループとの共 同研究をスタートすることができ，それらの成果を， 1995年に開催された「第1回チョコレート'ココア国 際栄養シンポジゥム」で発表することができた.その後， このシンポジウムは大きぐ注目され，2017年9月には，「第22回チョコレート、ココア国際栄養シンポジウム」 が開催されている.