一ブロイラー鶏種における退色筋胃に関する病理学的研究

摘要

筋胃の退色病変に関する病理学的理解を深め，その病因について検討することを目的として，食鳥処理場から一ブロイラー鶏種の退色が認められる筋胃を94例，肉眼的に正常な筋胃を10例収集し，病理組織学的 および生化学的に検索した。筋胃の退色病変は，漿膜面側の筋層が最も重度で，粘膜面側に向かって軽度に なっていった。病理組織学的には平滑筋の空胞変性や硝子様変性が全例で見られ，進行した病変では変性組 織における炎症性細胞浸潤や炎症性水腫が認められた。これらの病変は限局性あるいはび漫性に見られるこ ともあった力s，平滑筋束の走行に対して垂直に広がるように出現する像も見られた。ウィルス学的検査結果 からアデノウイルス感染症は考えられなかった。また，栄養障害を疑い，高速液体クロマトグラフィーを用 いて収集した筋胃組織乳剤のビタミンEおよびA含有量を測定したところ，どちらも退色筋胃と正常筋胃 に有意差は認められなかつた。