3．トマト黄化えそウイルスー植物と昆虫に感染するBunyaviridae科ウイルスー

摘要

トマト黄化えそウイルス（Tomato spotted wilttospovirus；TSWV）は，1915年にオーストラリアで初めて発見された。 植物ウイルスとして認知されてからの歴史は以外と古いが，完全ウイルス粒子の精製が困難であったことからタバコモザイクウイルスヤプロムモザイクウイルスなどの他の植物ウイルスと比較して研究が立ち遅れていた。 分子生物学の発展とともにウイルス学研究で使われる手法も大きく変化し，そのお陰でこのウイルスの遺伝的性質も明らかにされてきた。 1990年ベルリンでの国際ウイルス分類委員会で動物ウイルスを中心とするbunyaviridae科にTospovirus属が新設きれ，そのタイプウイルスとしてようやく分類された植物ウイルスである。 TSWVの特徴はBunyaviridae科に属する他のウイルスと同様に，外被膜を有する直径約80～120nmの球状ウイルスであり，その中に長さの異なる3分節の閉環ひも状のヌクレオキャブシドがパッケージされている。