2．インフルエンザウイルスの遺伝子工学と応用

摘要

欧米では，インフルエンザ対策に関する経済的、社会的認経も高く，すでに弱毒生ワクチンや新しい化学療法剤の開発が進められている。 一方，日本では，1997年の香港でのH5N1型トリ強毒株由来新型インフルエンザの出現や，1994年の予防接種法改正後のワクチン摂取率の極端な低下に伴うインフルエンザ流行の拡大と重篤化が社会閉篭となり，近年インフルエンザ対策に関する社会的認識が変化してきた。インフルエンザ研究に於ける1つのトピックスとして1990年代の遺伝子操作技術の開発とこれを用いた基礎および応用研究が挙げられる。この10年程の間に，技術的改良が行われ，著者らのグループでヘルパーウイルスを用いない新しい遺伝子操作技術が開発された。 また，遺伝子操作技術を用いた基礎研究では，PB1とPA以外のすべての遺伝子に変異が導入され，遺伝子の構造と横能の研究が行われた。 また，弱毒ワクチン株およびウイルスベクター開発を目指した応用研究も急速に進展した。 本稿では，著者らが開発した新しい遺伝子操作技術とこれを用いた最近の研究を中心に紹介する。