果実類の高品位一次加工品の製造への 応用が期待される酵素剥皮技術

摘要

トランプ政権の発足により，一時，足踏みをみせたTPPは米国を除く11力国による経済協 定の締結へと向かいつつある。いずれにせよ，今後も農産物取引を含む経済活動のボーダレス 化は進行し，我が国農業にとっては，大きな変革期を迎えることが予想されている。このよう な状況の下，国内の農業生産を維持する，あるいは機をとらえて更なる発展を目指すためには， 新たな取り組みが必須であろう。果樹産業においては，新たな加工品の開発などを通じた国産 果実類の需要の喚起が，その手段の一つになりうると考えられている。すでに，数年前から農 業の六次産業化の波に乗り，各地で特産の農産物を原料とした加工品の開発が積極的に進めら れてきている。この動きは，我が国におけるそれまでの果実類の加工とは一線を画するもので あった。すなわち，いわゆる「すそもの処理」ではなく，ある程度の品質の果実を原料とし. 自らの生産物の付加価値を向上させる手段としての果実加工が農業者の手によりおこなわれる ようになつたのである。また，加工品の品目も次第に多様化してきている。これまでは，果実 加工の中心は果汁加工であり，格外品は，その中で区別されることなしに，ひとまとめに格外 品として低価格で取引されていた。果汁以外のより付加価値の高い加工品の需要が増加すれば， 格外品の中から，比較的品質の高いものを，それに仕向けることも可能になるであろう。さら に，すぐれた品質の国産果実を原料とする高品位の一次加工果実は国際的な競争力を持つ商材 となることも期待される。