泌乳持続性向上に関するゥシ乳腺の細胞生物学的解析 ーラクトフエリンが乳腺を構成する細胞の増殖に及ぼす影響一

摘要

近年の育種改良によりホルスタイン種の高泌乳化が進hでいるが、その反面、高泌乳牛の飼養管 理にかかるコストが增加している。高泌乳牛の多くは泌乳前期に急激に乳量を増加させることから、 エネルギーバランスがマイナスとなり、いわば"身を削って牛乳を出す"といった状態になる。そ のため、繁殖障害や代謝病等の発症による損失が酪農経営の大きな問題となっている。そこで次の 改良目標として、より健全な状態でより効率的に乳量を維持させるため、初期のピーク乳量を下げ て中後期の乳量減少を緩やかにする泌乳持続性の向上（泌乳曲線平準化）が求められている。泌乳牛は分娩後約300日間に渡り乳生産を続けるが、分娩後約60日をピークに乳量は減少する。泌乳曲 線の変動は乳腺組織の機能的、形態的変化と関連していると考えられる。乳腺は乳腺上皮細胞とそ れを取り巻く線維芽細胞、脂肪細胞等で構成されており、乳腺上皮細胞の増殖は、内分泌ホルモン の制御に加えてこれらの細胞間で作用する細胞増殖因子等の局所因子が重要な役割を果たす。我々 は乳腺の細胞間で作用する局所因子としてラクトフユリンに注目しており、これまでに乳中ラクト フェリン濃度が泌乳期の進行に伴い上昇することを確認した。また、乾乳後のゥシ乳腺においてラ クトフユリンの発現が亢進することが報告されていることから1〕、ラクトフユリンが泌乳持続性を 負に制御する因子の1つではないかと考えている。しカゝし、ラクトフユリンが乳腺を構成する細胞 に及ぼす直接作用については不明な部分が多い。そこで、乳腺上皮細胞および乳腺線維芽細胞を採 取、培養し、細胞増殖に及ぼす影響について解析した。