医薬品メーカーでの研究者のキャリア

摘要

研究を職として志す理由はなhであろうか？ お金でも名声でもなく，純粋に真実の知を追究することにロマンを感じる人。 毎日得られる新しい実験結果に喜びを感じる人。 応用研究によって，世の中に役に立つ製品や技術を開発したいと思う人。 理由は様々であろう。 しかし，基礎研究者という職業は他の職業と比べると様々な点で共通した特殊性がある。 それは，“論文の執筆、出版”が主要な仕事の目的になっているところである。 また論文発表において，研究者の所属組織よりも個人名が尊重される点も特徴である。このように個人名が仕事の成果において尊重される職業は，服飾のデザイナー，文芸作家，スポーツ選手，企業経営者など非常に限られたものである。研究という仕事を志向する人たちの多くは，“義務としての論文執筆”とは別に，若くして個人の成果が尊重される“論文執筆の権利”に大きな魅力を感じていると考えられる。すなわち，様々な夢を持って大学院に進hでも，論文執筆が究極の目的とすり替わってしまうのである。 必然的に研究室を主宰できる教授のポスト以外のキャリアをまったく検討しなくなってしまう。 いうまでもなく，毎年ドクターを取得する研究者の数と比べて，教授のポストは限られており，これだけを目指していたのでは，オーバー、ボスドクが多数生まれてくるのを防ぐことはできない。