国立自然史博物館で，「生命を定義する」ということを考える

摘要

哲学科のマスターコースに入り講義を受けてい る時，新しい領域の言葉の波に洗われているよう な感覚の中にいた.音としては聞こえているがそ れがどhな意味を持つのかが分からず，苦労の連 続であった.その過程で，それまで何気なく使つ ていた言葉というものの持つ機能について目が行 くようになっただけではなく，一つの「もの?こ と」を定義することは果たして可能なのかという 疑念さえ芽生えてきた.それは，一人の科学者が 一つの蛋白質の機能を一生かけて研究してもまだ 謎が残るようなことと重なるようにも見えたので ある.普通は鷗外の『かのように』のように，あ る程度で分かったことにして前に進む.そうしな いと忙しい日常を乗り切れないからだ.この関係 が分かつたように感じたのは，日本で仕事の中に いた時には読む気にもならなかつた時間を掛けな ければ分からない話題や文章に触れる機会が増 え，一つひとつの言葉の意味を考えるだけの余裕 が出来たからだと想像している.