右下腹部の解剖と回盲部の吸収?免疫機能

摘要

右下腹部には，消化器系，尿路系および生殖器系臓器と血管が立体的に存在し，その解剖の熟知が肝要である.回腸末端部は胆汁酸やビタミンB_(12)の吸収を行うため，その切除により下痢や巨赤芽球性貧血を生じる可能性がある.回腸末端部は，未熟な免疫担当細胞を腸内細菌等により感作?成熟させ，全身に循環させる起点となる免疫臓 器である.右下腹部痛は日常診療でしばしば認められる症状で ある.腹痛は内臓痛，体性痛，関連痛に分類され，内 臓痛は管腔臓器の伸展，牽引，攣縮などが刺激となつ て生じ，その痛みは間欠的で局在は不明瞭である.尿 路結石ゃィレウスなどの痛みが代表的である.体性痛 は壁側腹膜の圧迫?牽引などの物理的刺激や炎症など の化学的刺激により生じる鋭い痛みで，内臓痛と比較 して鋭く強い痛みであり，痛みは原因病巣の近傍に限 局する.関連痛は，強い内臓痛や体性痛が求心線維を 介し脊髄の体性知覚神経を刺激することにより，その 神経が支配する領域に痛みを生じるものであり，痛み の原因から離れた位置に投影される.心筋梗塞の痛みが腹部に生じる現象は関連痛の一例である.