大きな網膜像差を処理するメカニズムの速度同調性

摘要

過大な両眼網膜像差は奥行きの知覚には寄与しないと考えられているが，最近の我々の研究により，二重像が知覚されるほどの大きな両眼網膜像差であっても，刺激を水平方向に動かすことによって大きな奥行きが知覚されることが明らかになった．ここでは，奥行き弁別のためのコントラス下感度を測定することによって，大きな網膜像差を処理するメカニズムの速度同調性を明らかにした．テスト刺激として，1次元DoGターゲットを固視点の上と下に呈示した．正のガウス関数の空間定数は1.17，2.34，4.67degであった（これは，空間周波数0.16，0.08，0.04cpdに対応している）．網膜像差の大きさは4.9degであった．実験の結果，最も小さいターゲットに対しては速度が15～30deg／sのときに最大のコントラスト感度が得られたが，ターゲットが大きい場合にはより高い速度において高い感度が得られた．これは，これらの速度に同調した動的なメカニズムによって大きな網膜像差が処理されていることを示している．