事象知覚における時間的錯覚－kappa効果における知覚される運動方向の影響

摘要

kappa効果とは，連続的に提示される光点の空間的距離が知覚された時間間隔に影響を及ぼす時間的な錯覚であり，縦方向に刺激を連続的に提示した場合には，刺激が下降するときに最小であり，上昇するときに最大になる．このことから，kappa効果は等速運動や重力などの複雑な物理的な力の表象によって生じると考えられている．しかし，この現象は単なる網膜座標上の異方性によって生じるとも考えられる．そこで本研究では，事象知覚に含まれる重力がkappa効果に影響を与えるかどうかを検討した．直線状に配置された3つのターゲットを次のように連続的に提示した．第一，第三ターゲットは固定された位置に提示したが，第二ターゲットは3つの異なる位置に提示した．第二·第三ターゲット間の時間間隔も3段階で操作した．知覚される重力に対する運動方向はターゲットの伴う影の位置によって操作した．7名の実験参加者か第一·第二ターゲット間の時間間隔と比較して，第二·第三ターゲット間のそれがどの程度であったかを評価した．実験の結果，ターゲットに伴う影の位置がkappa効果に影響することを示した．この現象は時間知覚が知覚された事象に含まれる複雑な力学的な力が関係することを示唆する．