把持運動課題における視覚情報の時間的な操作が運動と重さ知覚に与える影響

摘要

古くから把持運動に関する制御メカニズムと重さ知覚に関する研究は行われている．重さ知覚に関して，Size-Weight Illusion（SWI）やMaterial-Weight Illusion（MWI）などのように視覚情報から錯覚が生じることが知られている．しかし，視覚情報と運動情報の時間的なずれが，運動や重さ知覚にどのような影響を与えるかは知られていない．そこで，本研究では，把持運動課題中の視覚情報と運動情報の差が，運動や重さ知覚へ与える影響を調査した．視覚情報と運動情報を時間的にずらすため，仮想環境で実験を行った．重さ知覚は心理物理学測定法の恒常法を用いて計測した．結果から，視覚情報を遅延させると重く感じ，先行させると軽く感じていることが分かった．しかし，把持力や負荷力などの力に変化は見られなかった．これらのことから，重さ知覚は運動情報よりも視覚情報から影響を受けていることを示唆する．