フエルミ原子ガスを通して見えて来た室温超伝導の姿

摘要

1986年にべドノルツとミュラーにより鋼酸化物高温超伝導体が発見されてから20年以上が経過したが，未だに室温超伝導体が発見されたというニュースはない（もちろん様々な報告があるが追試がない等，全て未確認である）。発見当時，学生だった著者は，多くの先生や先輩方が次々と新しい知見を見出したのを見て，超伝導臨界温度が室温まで至る日は，そう遠くはないと思えたことが蘇る。その後，100K近くで発現する高温超伝導のメカニズムに対して，様々な考え方が提案されたが，全ての実験を説明し尽くし，更に新しい予言能力をも発揮するという十分条件をしっかりとクリアした理論はなく，多くの人々が機構解明という問題が解決したとは感じていない。つまり，酸化物高温超伝導体の理論は，その物性を理解する上では非常に大きな貢献をしたが，最後の高温での超伝導発現の根本を理解するという詰めが未だ残されていると言えよう。