事故から学ぶことと残された課題

摘要

我々は3つの大規模炉心損傷事故を経験する中で人的要因（TMI），安全文化（チェルノブイル），レジリエンス（福島）の重要性を学んできた。しかし，にもかかわらずあらゆる発電技術にリスクは残存し，リスクに向き合い不断の改善を行う必要がある。因みに航空では規制当局と業界（航空会社とメーカー）が規制·被規制の関係を超え，世界航空安全ロードマップを作成し安全向上に努力している。共通の目標に向けた努力は，航空機の利用による便益の追求と乗客の安全確保には異論がないことに基礎があると思われる。原子力には前者（便益）に関する合意が欠けている。エネルギー供給の中で原子力や再生可能エネルギーの果たす役割について定量的に考えるエネルギーリテラシーと，リスクを幅広い視野で見るリスクリテラシーの普及とがこの欠けた部分を補ってゆくことを期待し，この自省に満ちた論考を終える。