医療訴訟事例から学ぶ（82)—2次救急病院において，交通事故で搬送されてきた患者が 死亡したことにつき，医師の医療行為に注意義務違反があるとして 損害賠償請求が認められた事例一

摘要

救急医療における医療体制と問題点救急医療については「救急医療対策事業実施要綱」(昭和52年7月6日医発692号）に基づき，重症度-救急度に応じた，初期（1次)，2次，3次という階層 状の救急医療体制がとられている.しかし，実際に救 急医療を主として担っている2次救急病院では，宿日 直医師は1人が43%， 2名以下は71%を占めるとの 報告"もあり，現実には十分な体制を整えるには至つ ていない.このような場合，例えば，内科医が当直医 の時に搬送されて来た患者が心疾患であって，専門科 目外の医療について適切な対応ができなかつた場合， どこまで当直医や医療機関の責任を認めることができ るかという問題が生じる.