脳神経系をかく乱する農薬による新たな環境問題八チ大量死が私たちに伝えること

摘要

安定な農作物確保のため，農薬の果たしてきた役割は大きいが，病害虫や雑草への毒性は特異的ではなく，ヒトゃ生態系に予想外の影響をもたらした歴史がある.現行の農薬の安全基準には，最近注目され始めた農薬によるェピジェネティックな変化や多種類の農薬の複合的影響，内分泌機能のかく乱，発達期神経毒性の毒性試験は入っておらず，安全性の確立は不十分である.特にヒトの脳高次機能への影響は厳密な検証が難しく，今後の大きな課題であろう.農薬は昆虫の脳神経系の中でもコリン作動系(ァセチルコリン(ACh)を神経伝達物質とする伝達系） を標的にしているものが多いが，AChは単細胞生物から高等動物まで共通する生理活性分子なので，生態系への影響についてはより慎重な検討が必要である.