論文特集「近未来チャレンジ」にあたって

摘要

この特集では，近い将来に実現可能であると同時に社会へのインパクトが期待される人工知能研究の論文を紹介します．学術研究は「社会からの評価と奨励」に支えられてこそ繁栄するものであります．人工知能研究も同様で，更なる発展のためには，社会に貢献する成果が必要不可欠です．そのためには研究成果を「明確に時間を切って評価する」という姿勢が研究者にとって不可欠となります．たしかに，長年の困雉な研究の末に実現した革新的技術や，研究者の死後にその価値が初めて評価された基礎研究成果が存在することは事実です．しかし現在，社会は時々刻々と変化しており，実現の時期を漠然と設定して長期間の研究を進めていては，完成しても"時代遅れ"となってしまう恐れがあります．現在の社会的ニーズを滴たす技術を数年間程度で実現させようとする研究の進め方は人工知能においても有効でしょう．こうした考えで1999年の第13回人工知能学会全国大会より毎年「近未来チャレンジ」という企画セッションが行われています．セッションは，ニューチャレンジとサバイバル·オブ·チャレンジの2種類があります．前者は，新しいテーマの提案者が発表するセッションであり，後者は，昨年の大会で勝ち残ったテーマの提案者が企画するセッションです．どちらのセッションも同様に，聴講者へのアンケートの集計結果に基づいて審査を行い，翌年のサバイバル·オブ·チャレンジのテーマが選出されます．アンケートの項目としては，①5年以内に実現可能か，②社会に貢献するか，③人工知能研究に貢献するか，の3点があります．選抜を繰り返すことにより，最終的には社会的貢献のできる強力なAI技術が"生き残る"と期待されます．