政治と宗教

摘要

戦争が始まる前には政治というものをまったく理解していなかったし，新開を読んだりラジオに耳を傾けたりすることもまれであった，ケンブリッジに入るまでは政治への関心はなかった．そこでの最初の年に突然，'科学的政治'，すなわち科学的に正しいと証明できるようなものがあるに違いないという考えに取り付かれた．ある友人がそれは共産主義であると私を説得しようとした．たかだか1，2週間でそれはばかげた考え方であると思い，二度とそれに戻ることはなかった．政治にははっきり区別できる二つの側面があるという基本的真理に，私は思い至った．山つはある設定した目標をいかに実現するかという方法の問題，もうひとつは相互に対立する目標の相対的蚤要性，すなわち価値判断の問題である．事実に基づいたいかなる議論もこの第二の問題に究極的な回答を与えることはできない．深く根ざした意見の不一致をどのように取り除くかが民主政治の中心課題である．私の価値観は過去半世紀の間に次第に変化した．これほどく普通のことだと思う。