金属の特許こぼれ話（第13回）ギヨームとインバー

摘要

ギヨームが測定に供する合金はすべてアンフイ製鉄所で製作した．目標とする低熱膨張の合金の開発は両者の協力で成功した．新合金はインバー（Invar：フランス読みでアンバーまたはアンバル）と名付けられ，アンフイ社の登録商標になった．インバーの発明は低熱膨張にとどまらなかった．ギヨームはスイスの時計業界の協力を得て，ひげゼンマイ用の合金エリンバーを生み出した．エリンバーは温度変化によって弾性係数が変わらない合金で，時計のテンプの部品に使われ，スイス時計の精度向上に貢献した．ギヨームのノーベル賞記念講演の題目は「インバーとエリンバー」であり，物理学だけでなく工業応用に及んでいた．ギヨームの合金の研究の経過を，特許を参考にしながら追っていく．