血清抗コリン活性：アルッハイマ一病の臨床症状との関係および生物学的マ一力一としての提唱

摘要

アルツハイマー型認知症(AD)患者における血清抗コリン活性(SAA)測定の意義とその測定についての実際を総説した.レセプターバインディングァッセィを用いて簡便測定法の報告以後，SAAは血清中の抗コリン活性(AA)をもつ薬物およびその代謝産物の抗コリン活性の総和を表したものとされ，主に，薬剤起因性せん妄との関係あるいは認知症症例や非認知症症例を対象として認知機能との関係で論ぜられてきた.しかし，SAA は薬物投与によってのみ生ずるのではなく ，疾患に関する非特異的ストレス反応として関係することや内因性にAAが出現する可能性も示唆されている.我々はADの症例のSAAを測定し，SAAが抗精神薬の投与，認知機能低下および幻覚，妄想，日内リズム障害の行動心理学的症候(BPSD)との関係，なかでも幻覚，日内リズム障害との関連性を示唆すること，認知機能の中では記銘カ低下と関係することを報告した.また，薬剤非投与者の中にもSAA陽性者が存在すること，AAは薬剤因性以外に炎症性で内因性に出現すること，およびADが炎症と関係した疾患とする過去の報告ともあわせて，ADにおいてAAが認知機能低下やBPSDを惹起させるために， AAを有する薬物の投与に厳重に注意すること以外に5内因性に出現し，ADの病理を促進し，ADを進行させることも予想した.したがって，ADの進行を予測するマーカーとしてSAAを測定することに意義があると考えた.