自己免疫性膵炎，IgG4関連硬化性胆管炎に併発した胆管癌の1例

摘要

症例は62歳男性。心窩部不快感，体重減少を主訴に前医を受診した。閉塞性黄疸の診 断で当院を紹介された。腹部CTで，膵はびまん性に腫大し，膵内胆管は壁肥厚と狭窄を認め た。血中IgG4は389mg/dlと高値であった。ERCPでは，膵頭部で主膵管のなだらかな狭窄 があり，また下部胆管に強い狭窄を認めた。狭窄部のブラッシングと胆汁の細胞診はともに class IIだった。以上から自己免疫性膵炎，IgG4関連硬化性胆管炎の併発と診断した。ただ しステロイド治療を開始する前に，胆管癌の除外目的にENBDから連日5日間胆汁細胞診を 行ったところ，class Vが得られ胆管癌の併発と診断した。治療は亜全胃温存膵頭十二指腸切 除術を行った。病理所見は胆管，膵臓にリンパ球，形質細胞の浸潤と強い線維化を認め，胆管 狭窄部の上流に上皮内癌を認めた。自己免疫性膵炎もしくはIgG4関連硬化性胆管炎に胆管癌 の併発は極めてまれであるが，胆管癌の除外に努めることは重要であると考える。