アデイポサイトカインの新展開

摘要

従来,脂肪組織は受動的なエネルギー貯蔵臓器と認識されてきたが,近年の分子生物学的アプローチによりさまざまな内分泌因子(アディポサイトカイン)を分泌する内分泌臓器でもあることが明らかになってきた.肥満·内臓脂肪蓄積によるアディポサイトカインの分泌異常がサインスリン抵抗性をはじめとするメタポリック症候群の病態発症に密接にかかわっている.肥満に伴い脂肪組織から産生·分泌が高まり血中濃度が上昇するPAI-1, TNF-αは,それぞれ血栓形成,インスリン抵抗性を招く.遺伝性肥満動物の原因遺伝子産物として同定されたアディポサイトカインであるレプチンは.食欲抑制,エネルギー消費増強作用を介して体重を減少させるが,ヒトの全身性脂肪萎縮症における糖尿病,高脂血症,脂肪肝に対するレプチン投与の有効性も明らかになっている.さらに,脂肪組織特異的ホルモンであるアディポネクチンは肥満者において血中濃度が低下する.アディポネクチンはインスリン感受性増強作用,抗動脈硬化作用を有する.肥満時の低アディポネクチン血症はメタポリック症候群の基盤病態と考えられる.アディポネクテン産生増強剤,受容体アゴニストを含めたアデイポネクチンの医学応用が期待される.