アデイポカイン：血管の面から 心血管病治療の分子標的·メタポリックシンドロームのあらたな病態評価マーカーとしてのアディポサイトカイン

摘要

メタポリックシンドロームは，急性冠症候群に代表される動脈硬化性血管病の基となる病態である．ウエスト周囲径増大が国際的に診断基準の必須項目となっているのは，内臓脂肪過剰蓄積が病態の上流に位置するためである．"なぜ内臓脂肪組織の過剰蓄積が血管病につながるのが，という疑問に対する答えが，脂肪組織が分泌する"アディポサイトカインの異常"である．アディポサイトカインには，内臓脂肪過剰蓄積に伴って増加する多くの炎症惹起性因子と，唯一減少するアディポネクチンがあり，アディポネクチンには炎症性分子と指抗し血管病を抑制する作用があることがつぎつぎと明らかになっている．耐糖能異常·高血圧·脂質代謝異常に加え，アディポサイトカインの異常を念頭におくことが，メタポリックシンドロームの病態を理解するうえで重要である．アディポネクテンは病態評価のよい指標となるとともに，血管病治療のターゲット分子となることが期待される．