子宮頸部悪性腺腫におけるsteroid sulfataseの免疫組織化学的検討

摘要

子宮頸部悪性腺腫(minimal deviation adenocarcinoma:MDA;adenoma malignum)の発生機構解明の一助とする目的で,子宮頸部悪性腺腫,正常頸管腺,正常胃幽門腺における,steroid sulfatase,estrogen receptor(ER),progesterone receptor(PR),およびgastric mucinの免疫組織化学的検討を行った.正常頸管腺ではsteroid sulfataseの局在が5例全例で認められた.MDAでは4例中typical lesionを有する3例に局在を認め,異型性の強い1例では認めなかった.胃幽門腺では全例認めなかった.ER,PRの局在は,正常頸管腺で認めたが,MDA,胃幽門腺では全例認めなかった.Gastric mucinの染色性は胃幽門腺およびMDAでは全例陽性であったが,正常頸管腺ではすべて陰性であった.以上よりMDAは,胃幽門腺の形質発現を示す一方でsteroid sulfataseの発現を認めることから,局在でのエストロゲン環境を調節する能力を残しており,分化度の低下に伴いその性質が消失していく可能性が推察された.そのことは,MDAが胃幽門腺の異所性発生ではなく,ミューラー管由来の頸管腺より胃上皮化生を経て悪性変化を来す可能性を示唆するものと考えられる.