音像定位のためのホルマント位相差に基づく移動音源追従

摘要

大規模建築空間で行なわれるコンサートなどの催しでは，音の方向感を視覚の方向に一致させる先行者効果を用いて，音像定位せ行なっている．しかし，この操作を行なうオペレータ不足が問題となっている．現在，音像定位操作を補助する装置が市販されているが，最終的にはオペレータが音源位置を目視で判断し操作す早ものである．さらに音源の移動を考慮すれば，この音像定位操作はより煩雑になる．この普像定位操作の自動化のためには，書源の位置情報が必要となる．これまでに，音源の位置情報を得るためのさまざまな手法が提案されている．これらの手法は，一般に計算規模が大きく，実際甲コンサートホールの使用環境や音源の移動を考慮すれば，よりコンパクトで計算量が少ない手法が望まれる．このような要求に対し，われわれは音声に含まれるホルマントに着目し，一受信点測位法により静止した音源位置推定を行なう手法を提案した．一受信点測位法は，3つのマイクロホンに入射する信号の位相差を基に，マイクロホンへ達する信号の到来方向（水平方向と垂直方向）を得て，既知とした測位点の高さを利用して音源位置を推定する規模の小さいシステムである．そこでは音声の到来方向検出を行なうため，各マイクロホンで受信した音声信号から狭帯域通過フィルタによりある特定のホルマント周波数のみを抽出し，各マイクロホン間のホルマントの位相差を検出することにより，音源の到来方向を推定するアルゴリズムである．文献では，ホルマント周波数が一定であると仮定した場合の基礎特性を示している．しかし実相化を考えた場合，ホルマント周波数は変動し，提案した音源位置推定手法では推定誤差を生じるという問題があった．さらに，エコーの影響と音源の移動を検討していなかった．