人と機械とのインタラクションを考慮した作業データに基づく経路追従制御について：ベイズ推定を用いたポートハミルトン系の経路追従制御

摘要

日本では現在少子高齢化社会が着々と進hでおり，工場での作業や農作業，物資の運送など，未来の日常を支える様々な場面で深刻な人手不足に陥る可能性が高い.そのような問題に対しての解決策として，人間と機械が高度に協働·共存する社会の実現の助けとなる制御システムの構築を目指すことが考えられる.そうした背景において，例えばある動作を行う機械システムに外から人が物理的に介在する場面が考えられる.とくに始点と終点が決まっているような作業を人が行い，機械システムが物理的にパワーアシストを行うような場面では，個々人のくせによって経路途中で個々人でばらつきが出ることが想定される.そこで，経路の進行方向以外の方向に対しては，個々人の操作によるばらつきを許容できる制御系の設計が望ましい.すなわち，ばらつきを許容する経路途中では，経路に収束する方向に対しては機械システムが発生する力を小さくすることで，個々人の操作によるばらつきを無理に矯正しない制御系の設計が望まれる.システムを目標の経路に沿って動かすための制御手法として，軌道追従制御[1,2, 3, 4]や経路追従制御[5, 6, 7, 8, 9]などが挙げられる.これらの制御では目標とする軌道や経路上で最少となるポテンシャル関数を作成することで，制御系を設計する.これまでに筆者らのグループでも受動性に着目した経路追従制御の設計[10] について研究を進めており，目標経路方向と経路に収束する方向を表現する座標を構成的に計算することでポテンシャル関数を設計する手法を提案した.このポテンシャル関数の勾配の緩急を調節することで，機械システムの制御入力の大きさを調節できる.人と機械システムとが物理的に相互作用を及ぼす場面では，システムの制御入力の大きさ，すなわちポテンシャル関数の勾配の緩急の調節が重要であるが，経路上の位置に応じてポテンシャル関数の勾配の緩急を調節する作業は，設計者に委ねられるが，一般に自由度が高すぎるため，たくみに設計することが難しい.そこで，本研究ではポートハミルトン系で記述される機械システムを対象に，過去に得られたシステムの作業データからベイズ推定を用いて経路追従制御の設計を行う.作業データから軌道を求めるためにベイズ推定を利用する.ベイズ推定によって目標軌道の平均だけでなく分散も得られるが，この分散の値が，軌道上の各点での個々人の作業によるばらつき度合いを表現している.したがって，分散の情報を制御系設計に組み込むことで，経路上の各位置でのばらつき度合いを考慮に入れたポテンシャル関数が作成でき，個々人の操作によるばらつきを無理に抑制しない制御系の構築が期待される.本研究では平均と分散から得られる確率密度関数の尤度を評価することでポテンシャル関数の設計を行う.