アンチオキシダントと遺伝子発現制御

摘要

従来より，抗酸化剤といえば一般的にビタミンC，ビタミンE，β－カロチンなどのような酸化反応防止剤が思い浮かぶ．しかし，こうした生体に必要不可欠の化合物を含め，低分子抗酸化剤がわれわれの体にとり，どの程度必要なのか，またどのような作用を及ぼすのかはそれほど明らかとなっていない．ところが，最近になりある種の抗酸化剤によるPhase II解毒酵素の遺伝子発現誘導が報告されるようになり，抗酸化剤の新しい機能（例えば癌予防）としてにわかに脚光を浴びるようになった．本稿では，脂溶性低分子化合物による解毒酵素誘導の分子機構について，特にフェノール性抗酸化剤に鋭敏に応答するシス因子として同定されたアンチオキシダント応答配列（antioxidant response element，ARE）を中心に概説する．