営農方式と自然環境との相互関係からみた農村景観の成立過程に関する研究昭和初期までの北海道の農地開拓を事例として

摘要

農村景観は，営農を通じた，人と自然との相互作用によって形成された集落，農地などの様々な構成要素からなる。 最近では，棚田や畦畔木の保全や再生が社会的関心を集めている。 農村景観の整備状況の内容は，植栽関係の比重が高い（公共施設周辺の植生83，8％，沿道への植生63．0％，花壇の設置52．5％）ほか，工学的対処が多い（歩道のカラー舗装など30．4％，擬木手すりなどの設置31－4％）など，外見上の美化にとどまることが多い。 これらの景観整備は，営農と直接関わる部分に手をつけずに，可能な所を工学的に対処した点で，一定の評価ができる。しかしながら，棚田や畦畔木，農地と防風林，排水路等の営農と直接関わる対象，さらには，これらの維持管理や土地利用形態などを視野に入れた景観整備は，ようやく端緒についた段階である。