輸送性肺炎の原因菌とされるStreptococcus equi subsp．zooepidemicus の実験的気管支内接種による臨床像と病理形態像

摘要

Streptococcus equi subsp．zooepidemicus（S．zooepidemicus）はウマの扁桃などに常在する細菌で、競走馬のいわゆる輸送性肺炎の原因菌と考えられている。 競走馬はしばしば輸送直後に一過性に発熱するが、多くの場合、短期間で良化する。 しかしながら、時として肺炎に移行する例もある。 いつたん肺炎を発症すると、長期間の治療が必要となり、重症化した場合は競走生命が絶たれてしまう。 輸送性肺炎を発症した馬からはS．zooepidemicus がその原因菌として分離されることが多く、扁桃に常在していた本菌が経気道的に席に感染するものと考えられている。このような輸送性肺炎の治療は、トレーニングセンターでは抗生剤投与と並行して、気管支肺胞洗浄法（BAL）が行われている。 これは炎症を起こしている気管支を直接洗浄七、細菌および催炎物質を取り除くことにより治癒を促進するものである。 また、このBALによって得られる気管支肺胞洗浄，液佃ALF）は細胞診や原因細菌の分離同定、さらには薬剤感受性試験も行えるため、本法は診断にも有効な手法である。しかし、これら肺炎の病勢あるいは病態を反映する臨床的データと病理形態像の相関性について、漠然とは理解されているものの、詳細に臨床獣医師が知識を得る機会はあまり多くはなかった。 以上の背景から、獣医技術向上研修（病理専門研修）の感染症の病理研修の一環として、実験的に輸送性肺炎を再現し、BALFにおける出現細胞の観察（細胞診）とその時点での病理形態像を関連づけるために、次のような実験を行つた。