危機管理対策としての経口投与型狂犬病生ワクチンに関する調査

摘要

日本における動物の狂犬病対策として，「狂犬病予防法」および「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」のもとに海外からの侵入防止対策と国内での蔓延防止対策がとられている。 狂犬病清浄国である日本にとって，防疫対策で重要なことは海外からの本病の侵入を阻止することであり，2004年10月に改正された犬等の輸出入検疫規則や輸入動物の届出制度の施行により動物検疫体制は一層強化され，その侵入リスクはきわめて低くなった。 しかし，北海道等の港湾地区における外国籍船からの不法上陸犬の問題等，狂犬病の侵入の可能性が指摘されている。 万一狂犬病が侵入した場合には，国内での本病の蔓延を防止する措置が必要となるが，現在の国内防疫対策は飼育犬等に対して行われているものの，野生動物に対して十分な検討が行われていない。 そこで，野生動物の狂犬病発生に備えた危機管理対策として，海外の狂犬病発生国で蔓延防止または撲滅のために使用されている経口投与型狂犬病生ワクチン（以下，経口ワクチン）の情報収集を行い，その結果を取りまとめた。