真核生物のD－アスパラギン酸代謝に関係するビタミンB_2およびB_6酵素の研究

摘要

遊離のD－アスパラギン酸がさまざまな動物に見いだされ，重要な生理機能を有していることが近年明らかとなってきた．1970年代にDAnielloらによりマダコ（Octopus vulgaris）の脳にD一アスパラギン酸が存在することが明ら　かにされたのが，動物組織でD－アスパラギン酸が見いだ　された最初の報告である．その後イカにおいてもその存在が確認された．1980年代には，ある種の海産二枚貝やラットに比較的高い濃度で見いだされ，1990年代以降には，ヒト，鳥類，両生類，魚類，甲殻類など様々な生物種において見いだされている．タコなどの軟体動物では，D－アスパラギン酸が神経組織に豊富に存在していることから，神経系への関与が指摘されている．ほ乳動物においては，それぞれの臓器の発達とその濃度の増加が一致することから，細胞の増殖や分化との関連が考えられている．またその後の解析から，メラトニン合成、分泌の抑制やテストステロン産生の克進など，いくつかのホルモン分泌や生合成にも関与することが明らかにされた．以上のように，種々の動物においてD－アスパラギン酸が見いだされたことから，その生理機能を解明する研究が現在活発に行われている．