トコトリエノールの腫瘍性抗血管新生作用と 食品応用に閬する研究

摘要

ビタミンE (トコフエロール）は，ラットを全乳で飼 育すると成長異常がないのに繁殖しないという1920 年の動物実験が契機となり発見された.トコトリェ ノールは，それから約40年後にゴム樹液から見出さ れた.トコフエロールとトコトリエノー ルは側鎖構造 が異なり.トコフエロールは飽和フイチル側鎖を，ト コトリエノー ルは不飽和イソプレノィド側鎖を持つ. 自然界には8種類のビタミンEが存在し，異性体の違 いはクロマン環上のメチル基の数と位置の差による. ビタミンEは植物の葉緑体で生合成され，トコフエ ロールは植物界に広く分布し，米油，小麦胚芽油ゃ大 豆油に多く含まれ，油脂の酸化を防いでいる.一方， トコトリエノールが含まれる天然物は限られ，米糠やパーム油，小麦胚芽に特徴的に含まれる.本研究では， トコトリエノールの腫瘍性抗血管新生作用を世界に先 駆けて発見し，その作用分子機構を培養細胞試験と動 物試験で明らかにした.また，トコトリエノールの消 化管吸収と体内分布，トコトリエノールによる皮膚抗 炎症作用と脂質代謝改善作用，トコトリエノー ル高含 有イネ品種の作出，日本人のトコトリエノー ル摂取量， トコトリエノール多量摂取の安全性を明らかにし.脂 溶性ビタミンとして.また，食品の機能性成分として， トコトリエノールの生理的重要性を究明した.