自然排泄便中の剥離がん細胞を用いた新しい大腸がん診断法

摘要

大腸がんは世界で年間約107万人が罹患し、約62万人が死亡するがんである。先進国では常にがん死亡率の上位であり、日本でも生活様式の欧米化に伴って増加傾向にあるが、一般的に早期発見し、内視鏡的切除や外科的切除による治療ができれば生存率が極めて良好ながんである。つまり大腸がんの死亡率を低下させるためには、がん検診を含めた早期診断が最も重要である。現在、大腸がん検診法として便潜血反応検査が広く普及しているが、最近の大規模臨床研究において便潜血化学反応3日法の感度はadvanced neoplasiaにおいて11～24％程度であり、invasive cancerでも25～50％程度であることが分かってきた。一方で日本においては抗ヒトヘモグロビン抗体を用いた便潜血免疫法による大腸がん検診が行われており、欧米でも感度および特異度が高い便潜血免疫法に替わりつつある。2万人規模の全症例に大腸内視鏡を施行した検討が日本から報告され、便潜血免疫反応1日法の感度はadvanced neoplasiaにおいて27％であり、invasive cancerでは66％であると報告された。しかし、便潜血反応検査は便中の微量なヘモグロビンを診断するものであり大腸がんを特異的には診断していない。また早期がんの診断率は50％程度である。