ハギア•ソフィァ大聖堂の屋内外環境が壁画劣化に及ぼす影響: 相図による塩析出環境条件の検討

摘要

ハギア•ソフィァ大聖堂（現アヤ•ソフィァ博物館）では第2コーニス北西ェクセドラを中心に堂内各所で塩の析出を原因とする内装材の剥落等の劣化の進行が確認されている。佐々木らの報告によると北西ェクセドラの内壁では過去の修復材料に上塗りするように新しい修復.材料が使用されており，根本的な劣化要因に対する対処がないままこれまで劣化が継続的に生じてきたものと推測される。こうした内装材の剥落による劣化は歴史遺産の保存のみならず観光客の安全性の観点でも重大な問題であり，修復サイクルをできるだけ減らすうえでも，壁画の劣化メカニズムを解明したうえで適切な保存修復計画を立てることが重要である。ハギア•ソフィァ大聖堂の塩析出による壁画の劣化メカニズムの解明を目的に，析出塩のうち析出箇所で劣化の進行が確認されている硝酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを対象に，堂内外環境と塩析出性状の関係について相図を用いて検討した。