国民生活最優先の経済運営とは何か: その戦略的課題と実現への道を考える

摘要

アベノミクスの「実績」を安倍首相が誇らしげに語れば語るほど，生活困難にあえぐ多くの国民は嘘つき政治の横行を嘆くばかりである.にもかかわらず，なお安倍政権の支持率が劇的に凋落しないのはなぜか.民主党政権の政権運営の失敗もさることながら，日本の経済のかじ取りを野党に任すことへの不安が，野党支持者や無党派層の意識のなかに潜んでいることは否定できないように思う.アベノミクスも含めて歴代自民党政権が一貫して追求してきた「財界本位の経済運営，端的に言えば大企業の成長こそが日本経済=日本のGDPを拡大させ，それが最終的に国民生活を潤すことになる」という理論（トリクルダウン論）と政策は，マルクス経済学者だけでなく，多くの民主的な経済学者によって実証的にも理論的にも批判されてきた.