重畳マルチグリッド前処理による電磁界解析の高速化

摘要

近年注目されているエビキタス通信で用いられるアンテナ及び通信機器では，従来の遠方界の挙動に加え，至近距経での現象が重要視される．特に電子機器の小型集積化，高速化に伴い，電子機器内での干渉などその無線システム全体の影響も考慮した上での設計が要求されるようになってきた．このような現象を解析するために，誘電体を含む解析対象を微細な要素に分割し辺要素を用いて定式化する辺要素有限要素法が提案されているが，解くべき連立方程式は非常に大規模なものとなり，収束に要する反復回数と計算量が飛躍的に増加することが知られている．本論文では，階層的に構成された粗グリッドによる制約式を解くべき方程式に重み付け重畳して前処理する新しい手法を提案する．この前処理は従来法に比べ必要とするメモリ量が少なく，更に実装rnが容易であるという特徴をもつ．この処理により収束性が改善されることを固有値分布が条件数を低減する方向に変化することで理論的に示す．更にポアソン方程式及び辺要素有限要素法で定式化された高周波電磁界方程式に関する数値実験により，収束性が改善されることを確認する．