令和元年の缶詰業界

摘要

我が国の経済は雇用•所得環境の改善や堅調な企業収益などに支えられ緩やかな回復傾向は続いているものの，世界的に見ると中国経済の減速や米中間の貿易•技術面における緊張の高まり，英国のEU離脱を巡る不透明感など多くの要因により世界経済は低迷している.特に中国経済は，近年投資依存型の高成長によって生じた過剰債務問題を是正するために構造調整を行っていたところに米中の貿易戦争が発生し，実質GDP成長率が7%を割り込むなど減速傾向が顕著になっている.これらは我が国の製造業にも大きな影を落としており，電機部品や輸送機械などを中心に中国向け輸出が減少している.中国では金融緩和や個人所得減税，国有企業の投資拡大容認などの内需刺激策を行っており，また米中対立もG20大阪サミツトでの首脳会談により協議の継続が合意されたことから，大幅な失速は回避された.しかしながら世界全体では景気は後退局面に入っており，米中の経済摩擦の再燃によるさらなる景気の減速が進めば素材や食料品なども含め広く我が国の産業に影響を及ぼすことが懸念される.