ヒト多能性幹細胞由来肝細胞と小腸細胞の作製と創薬応用

摘要

肝細胞および小腸細胞は、医薬品の吸収や代謝、排泄において重要な役割を担う。創薬過程において、医薬品候補化合物の肝臓および小腸での動態や安全性を評価するためのin vitro評価系として、これまでヒト初代培養細胞や株化細胞が汎用されてきた。しかし、 前者は高価格であり、流通量が少なく、個人差が大きい等の欠点を有しており、後者は生体組織に比べてその機能が大きく劣っているため、薬物動態を正確に評価できないという欠点を有する。これらの問題点を解決するため、医薬品のヒト肝臓および小腸における動態や安全性を高精度に予測できる新規評価系の構築が不可欠である。そこで、自己複製能と多能性を有するヒトES/iPS細胞から肝細胞や小腸細胞を作製できれば、有用な創薬支援ツールになると期待されている。 本稿では、筆者らがこれまでに開発してきたヒトES/ IPS細胞由来肝細胞および小腸細胞の作製技術とその実用例について紹介したい。