1セグメントモデルを用いて投球時の外反ストレスを推定する方法論

摘要

米国メジャーリーグ選手を対象にした調査によると，発症した外傷・障害の内，投球肩関節，投球肘関節に関わる外傷・障害が全体の1，2位を占めていたと報告されている（Posner et al.,2011，Conte et al.,2016）．中でも，最も頻発しているのが肘関節内側側副靭帯損傷で，損傷した靭帯の再建手術の件数が増加している（Cain et al.,2010，Hodgins et al.,2016）．内側側副靭帯とは上腕骨と尺骨を繋ぎ，外反方向への荷重（以降，外反ストレスと呼ぶ）に抵抗し，肘関節を安定させる重要な靭帯である．しかしながら，過度な外反ストレスが繰り返し加えられることで，この靭帯は損傷もしくは断裂する．つまり，野球選手は日々繰り返される投動作の中で無意識に内側側副靭帯に対して過度な外反ストレスを繰り返し与えていると考えられる．先行研究にて，投動作中の最大外旋位での外反ストレスの大きさは，投球肘関節障害のリスクを表す指標となり得ると示唆された（Anz et al., 2010）．投動作中の外反ストレスを計測し，その個人差や個人内変動をモニターすることは，内側側副靭帯損傷を含む投球肘関節障害の予防のために効果的であると考えられる．