嚥下障害患者を再現した患者ロボットWKA-2 の開発－物性特性が異なる食べ物による嚥下障害患者への影響

摘要

人は食事によって生命活動を維持している．その食物を取り込み，胃に送り込むための一連の流れ（経過）が摂食嚥下である．この食べる機能の障害すなわち摂食嚥下障害は、食塊が食道ではなく，気管に流入してしまい(Fig.1-2)，脱水や低栄養の危険をもたらすばかりでなく，人間の基本的な欲望である「食べる喜び」が奪われ，その人のQOL(Quality Of Life)が著しく低下する[1-2]．また，誤嚥性肺炎や窒息により、生命に直結する危険性がある[2]．この嚥下障害の診断と評価のため， 嚥下造影検査(VF)「video fluoroscopic examination of swallowing」がおこなわれる．嚥下造影検査は，嚥下障害患者に対し，食物を食べさせ，患者が食物を飲み込hでいる様子をＸ線透視装置で口腔内部，咽頭部，および食道部を動画撮影する．その際，口腔から舌根部ー咽頭腔への飲食物のたれ込み（spillage）や喉頭蓋谷への食塊の貯留で、誤嚥の有無や危険性を判断する重要な検査方法である．ただし，飲食物のたれ込みや貯留のVF 所見が、飲食物の種類により、どの様に変化するのかに関する詳細な研究は少ない．しかし，患者に対して飲食物の種類を変えながら長時間の嚥下造影検査をおこなう事は，放射線被曝が大きくなると同時に誤嚥の危険性もあり，倫理的な問題点も挙げられる．それで，われわれは患者ロボットを用い，ロボットに食物を食べさせ，口腔から舌根部～咽頭腔への飲食物のたれ込み（spillage）や喉頭蓋谷への食塊の貯留をシミュレーションすることで，摂食·嚥下障害に関する情報を得，それを治療方針に活用することができると考えておる．