アルツハイマー病治療を目指したアミロイドβ標的金ナノ粒 子の開発

摘要

アルツハイマー病は高齢者における認知症の代表例 である。アルツハイマー病を発症する原因の一つとし て、脳の神経細胞外におけるアミロイドβ（Aβ）の 凝集·蓄積が挙げられる。このため、Aβを標的とし た抗Aβ抗体による治療が盛hに検討されている。抗 体の作用機序として、Aβ凝集体に抗体が結合して凝 集体を細分化させるという説、Aβに結合した抗体が ミクログリア細胞によるAβ貪食を促進するという説 等が提唱されている。抗Aβ抗体を使用した臨床試験 では脳内Aβ凝集体の減少及び認知機能の改善が報告 されているが[1]、未だ治療効果は不十分であり、ま た抗体が高価であることも課題として存在する。抗体 に代わるAβの標的方法としてAβ結合性色素が挙げ られる。コンゴーレッド（CR）やチオフラビン T(ThT)はAβに特異的に結合するため、アルツハイ マー病の診断等に利用されているが、ミクログリア細 胞による貪食を誘導することはできない。一方、ナノ 粒子は薬物送達キャリアとして開発されている中で免 疫系から異物と認識されてしまうことが課題となって いるが、これを逆に利用することで貪食の促進が期待 できる。このことから、Aβ結合性色素とナノ粒子を 用いた薬物送達を組み合わせることで、新たなアルツ ハイマー病治療法が開発できると期待される。 本研究ではAβ結合性色素を金ナノ粒子表面に修飾 し、Aβ標的化金ナノ粒子を開発する。これにより、A β凝集体の細分化及びミクログリア細胞の貪食によっ てAβ凝集体の脳内からのクリアランスを促進する新 規アルツハイマー病治療の創製を目指す（Fig.1）。