中性子非弾性散乱を用いたＡｌ系錯体水素化物におけるＡｌ－Ｈ結合の振動モード観測

摘要

Al 系錯体水素化物は、金属陽イオンM~( n+)(n: 金属M の価数)と錯イオン([AlH_4]-など)のイオン結合で形成され、適度な熱的安定性や可逆的な脱·再水素化反応を示す。私たちは、Al 系錯体水素化物の物質探索とその格子振動などの基礎物性の研究を進めており、アルカリ金属とアルカリ土類金属が共存する新規LiCa(AlH_4)_3 の合成に成功した[1]。格子振動は、物質中の原子の化学結合に関する振動モードを表すため、Al 系錯体水素化物の同定や脱·再水素化反応の理解を深める上でも振動モードの観測が不可欠となっている。その観測法において、中性子非弾性散乱は全ての振動モードの観測が可能であり、散乱強度が元素の非干渉性散乱断面積に比例する。水素の非干渉性散乱断面積は、他の元素の10 倍以上のため特に水素の振動モードの観測に中性子非弾性散乱が有効である。本研究は、中性子非弾性散乱を用いてLiCa(AlH_4)_3 の[AlH_4]-におけるAl-H 結合の振動モードを観察し、その振動モードに対するLi+とCa2+の寄与を明らかにすることを目的に行った。