1-m 磁力支持天秤装置による動的風洞試験に向けた模型運動制御法の提案

摘要

本稿では1-m 磁力支持天秤装置を用いた強制加振による動的風洞試験に向けて改良した模型運動制御系の提案を行った．従来の模型運動制御系では制御特性に周波数依存性が存在し，加振周波数におけるゲインの変化や位相遅延が運動追従性に影響する．また，外乱抑制性能が低下し，変動する空気力による干渉運動を誘起する．干渉運動は空気力評価の際に姿勢変化を考慮する必要がある本装置において計測誤差を生むことが懸念される．そこで目標の運動を実現する磁場を形成するためにコイルに印加される電流を検討し，加振運動において目標の運動に対するゲインや位相の変化なく運動を行うことが可能な制御系の提案を行った．提案する制御系では運動中に加わるべき磁気力の主な変動成分が加振周波数であることに着目し，加振周波数とそれ以外の周波数成分を分離して制御を行う．加振周波数の運動制御は，変動する電流を既知の正弦波関数として与えることで行う．それ以外の運動制御は従来の制御系を用いるが，計測された位置?姿勢の変動と設定点の変動から加振周波数成分を除くことにより，ゲインの変化や位相遅延の運動への影響を小さくすることができる．そして，それぞれの周波数成分の制御で出力された電流の和をコイルに印加する．本研究では加振周波数成分の電流として与える正弦波関数中の係数は運動振幅を観察しながら手動で決定したが，今後更なる効率化と高精度化が待たれる．提案した制御系は無風時加振および気流中加振を通じて有効に機能することが実験的に確認され，1-m MSBSによる動的風洞試験の可能性が示唆された．