列車のトンネル突入時に発生する非定常流の可視化実験と数値シミュレーション

摘要

列車が高速でトンネルに突入するとトンネル内に圧力変動が発生する．これが原因となり，トンネル坑口付近に騒音·振動等の環境問題を引き起こしたり，車体や乗客への負担となることがある．この問題に対して，在来線の切妻型先頭部を対象として，実車試験と模型実験によりトンネル突入時の圧力変動に関する研究が行われた．その結果，角張った先頭形状の車両が突入した際の圧力変動は丸まった先頭形状の車両より大きくなることが確認された．この主原因は，角張った先頭部周りの大きな流れのはく離により見かけの断面積が増加しトンネル突入時の圧力上昇が大きくなると推測された．しかし，車両表面の圧力測定および流れの可視化は行われているものの，先頭部周りの空間的な流れ場は測定していないことから，はく離を伴う先頭部がトンネルに突入する時の流れの様子は分かっていない．特に，車両先頭部が角張っている場合，トンネル突入時に形成される圧縮波の波形にオーバーシュートが生じる，その収束後も，丸まっている先頭部の場合と比べて圧力上昇量が一定量大きくなる現象が起きるが，この原因の詳細は不明のままである．本研究では，可視化実験と数値シミュレーションにより，先頭部で大きなはく離が伴う車両がトンネルに突入する際の流れのメカニズムを定性的に解明することを目的とする．可視化実験は，過去の研究で使用された模型発射装置および煙発生装置を用いる手法で行った．また，数値シミュレーションは2 次元で行い，トンネル突入時の現象を定性的に再現した．