レーザフォーミングを用いた金属板表面への魔鏡製作法: 表面に形成される微小凹凸と結像性能

摘要

照射部に圧縮塑性ひずみを発生させ板材を曲げるレーザフォーミンダは2000年代に多くの研究成果が報告されてきたが，引張ひずみが生成できないことや大変形を与えられないことから，多くが単純な直線曲げ加工や，皿形や鞍形などの単純な三次元加工に限定されていた．本研究では，新たなレーザフォーミンダの応用分野として，レーザフォーミンダの際に金属表面に生じる微小な凹凸を用いた金属表面への描画技術の確立を目指している．一般にレーザフォーミングでは，レーザの走査線上に水平方向の圧縮塑性ひずみが生じて，表面が凸状に盛り上がる．従来，この凸部は不要なものであったが，本研究では走査線に沿った高さ1～l00μm程度の凸状のラインを利用して金属表面に描画する．この技術を確立すれば自動車やスマートフォンなどの工業製品外板にオーダーメイドされた模様や文字を短時間·低コストで描画できるようになり，工業的価値が高いと考えられる．特に，1μm程度の凹凸を作成すれば魔鏡のように目視では認識できないものの，スタリーンに投影した反射光の中に模様を浮かび上がらせることができ，防犯タグや工業製品の識別子へも応用できると考えられる．ただし，複雑な模様を浮かび上がらせるためには鏡面に生じた極めてわずかな凹凸を巧みに組み合わせる必要があり，また，像を鮮明に浮かび上がらせるには鏡面各部にできた凹面部の焦点が同一スクリーン上にくるように凹面部の曲率や大きさを調整する必要がある．本研究ではレーザ照射部に生じる高さ数μmの凹凸部の形状寸法とレーザ加工条件(焦点外し量，走査速度，レーザ出力)との関係を明らかにし，レーザフォーミングによる金属板表面への魔鏡製作法の確立を目指す．