生分解性中空糸を犠牲材料とした中空構造を有するMID の製作

摘要

MID(Molded Interconnect Devices)は，主に表面に電気回路が形成された射出成形品のことをいう．当初は立体配線板として開発されたものであるが，近年では電気的機能と機械的機能の融合が可能なことからアンテナやコネクタ等，単なる配線板以外の機能を持つデバイスに応用されており，さらにこれらの機能に加え，光学的な機能を一体化した光通信モジュールも実用化されている． このようにMID は様々な機能を組み込みながら応用範囲を拡大してきた．特に近年ではMID をメカトロデバイスへ応用しようとする動きが活発になっている．しかしながら，これまでの応用例としてはセンサ部品が中心であり，MID 自体が動作するアクチュエータの開発例は少ない．筆者らはMID を応用することで新しい機能を持つメカトロデバイスの実現を目指し研究を行っている．特に成形品の内面に高精細な電気回路を有するMID の開発に注目しており，犠牲層を用いた回路パターンの転写によるMID の工法を検討しているある．この工法では，生分解性ポリマーなど溶出除去が可能な樹脂材料を用いて三次元形状の転写用成形品の表面に回路パターンを形成し，この成形品の外側に別の樹脂材料を成形する．その後，転写用成形品のみを除去して立体形状成形品の内面に回路パターンを形成する．本報ではこの技術を応用して，自由度の高い流路や中空配線回路の形成について検討を行い，MID のさらなる応用発展の可能性を評価する．