雨滴の衝突を伴う気液界面を通しての二酸化炭素吸収に関する研究

摘要

19世紀の後半から現在に至るまでの経年的な大気中のCO_2濃度の上昇は，地球温暖化の大きな要因の一つである．したがって，大気中のCO_2濃度の将来の変化を正しく予測することは地球温暖化を議論するうえで極めて重要である．大気中のCO_2濃度の上昇に伴う地球温暖化の予測に現在用いられている主な方法は，大気·海洋大循環モデル(GCM：General Circulation Model)による数値シミュレーションである．しかし，GCMには数多くの不確定要素が含まれているため正確な温暖化予測が行われているとは言い難いのが現状である．この不確定要素の一つに，地球の表面積の約7割を占める海洋と大気間でのCO_2をはじめとする温室効果ガスの交換量が，正確に評価できていないことが挙げられる．その原因の一つとして，代表的な気象現象である降雨の影響がまったく考慮されていないことが挙げられる．事実，既往研究では，自然界において降雨に起因する気液界面を通しての物質移動は無視できないと結論付けている．しかし，これらの研究では，雨滴の間隔や界面衝突時の雨滴速度，および雨滴径が気液間の物質移動にいかなる影響を及ぼすかについて十分検討せずに，その促進効果は運動エネルギフラックスKEFにより一意に決定できると結論付けている．さらに，雨滴の衝突を伴う気液間の物質移動のメカニズムについてもなhら検討されていない．そこで，本研究では，様々な特性を持つ降雨が開水路流れの気液表面を通しての物質移動に及ぼす影響を比較·検討することによって，物質移動を支配する最適な降雨パラメータを明らかにすることを目的とした．さらに，CO_2吸収のメカニズムを解明するために，PIVによる雨滴衝突時の液側界面近傍の流動場の測定と，LIF(レーザ蛍光法)を用いた雨滴衝突時の液側へのCO_2吸収の可視化を行った．