咬筋における痛みと浮腫性変化に関する研究

摘要

近年、ドラッグデリバリーシステムを用いた除痛治療に大きな期待が寄せられている。除痛治療の効果を判定するためには、痛みに対する末梢での変化を客観的に評価する必要がある。一般の歯科臨床において咀嚼筋に痛みを訴える患者は非常に多く、咀嚼筋の痛みは開口障害や咀嚼障害、慢性疼痛を引き起こし、患者のQOLを著しく低下させる。しかしながら、咀嚼筋の筋痛の診断は、問診、触診といった患者の主観に頼ることが多く、客観的な診断法はいまだ確立されていない。近年、咬筋の痛みに対して、超音波装置やMR装置を用いて画像評価した報告が散見され、咬筋の痛みのある患者群では、健常人に比べて、筋肉に浮腫性変化がみられることが明らかとなった。しかしながら、咬筋の痛みと浮腫性変化との関連メカニズムは明らかではない。そこで本研究は、咬筋への痛み刺激が筋の浮腫性変化を引き起こすか否かについて、血漿漏出に着目して実験を行った。