クラウニング形状付加によるスラスト針状ころ軸受の低トルク化

摘要

自動車には燃費向上と環境負荷低減が強く求められており，摩擦損失低減は重要な課題である．軸受部の摩擦を半減すると，燃費が 3% 向上し，1 台当たり年間 43，000 L のCO_2 を削減できるとされる．スラスト針状ころ軸受は，高負荷容量，高剛性，コンパクトであり，エンジンやトランスミッション等，自動車用途で数多く利用されるため，その低トルク化の社会的意義は大きい．一方，スラスト針状ころ軸受のトルク発生要因は，軌道輪ところの周速差による差動すべり，転がり粘性抵抗，保持器のすべり摩擦，池の撹拌抵抗である．したがって，軌道面或いはころにクラウニング形状を設ければ，差動すべりの抑制，転がり粘性抵抗低減による低トルク化を期待できる．クラウニング形状には，部分クラウニング，対数クラウニング，及び単一円弧のフルクラウニング等があり，後者は中央面圧が高くなるものの，接触面積が小さいため，より大きなトルク低減効果を見込める．そこで本報では，軌道面にフルクラウニング形状を付加し，トルク低減効果を確認した．加えて，発熱抑制による軸受の長寿命化も期待できるため，軸受温度も測定した．